緊急雇用調査団のまとめ
連合北海道
2009年1月20日
 
1.連合北海道総合雇用対策本部は1月19日〜20日、函館市および苫小牧市に雇用調査団(団長 村田 仁事務局長)を派遣し、関係行政機関、経営者団体、自治体、関係労使ならびに離職した労働者からのヒアリング調査と意見交換を実施した。
 今回の調査の目的は、米国発の金融危機を契機に国内、道内企業の経営環境と雇用にどのような影響をもたらしているのか、国の経済・金融・雇用対策が政策効果をあげているかについて実態を把握するためである。
 
2.我が国の雇用失業の現状は、主要な輸出産業である自動車、電機関係企業において、派遣など非正規労働者の解雇・雇い止めという形で雇用調整が顕在化した。しかし今後、二番底、三番底とさらなる景気後退に直面した場合、正規雇用を対象とする雇用調整、生産拠点の縮小・廃止、撤退・集約等による事業所閉鎖が懸念される。それは、地域経済に大きなダメージを与え、個人消費の低迷による国内需要の縮小をもたらすおそれがある。世界各国は不良債権の確定と償却を急ぎ、協調して景気雇用対策を実施し、生産と需要の喚起に努める必要がある。
 
3.リーマンショックによる我が国の企業金融への影響を回避するため、とりわけ地域金融機関の体力強化が重要である。今般、地元紙で北洋銀行の公的資金申請が報道されたが、北海道のリーディングバンクとしての財務基盤を整え、融資先企業を支えるための予防的措置と評価し冷静に受け止めたい。
また、信金、信組など中小金融機関では、不良債権の拡大と自己資本比率の低下が懸念される。今後、健全性を回復し連鎖的破綻を避けるためには、金融当局のバックアップを受け、合併等による経営基盤の強化を図り、円滑な資金調達と資金の仲介機能を確保して地域経済への役割発揮が求められる。
 
4.「モノ扱い」と批判されるような雇用調整のやり方は、労働者に対する経営責任を顧みないものである。連合北海道は経営者団体とともに、雇用の維持について最大限努力することが労使共通の役割であることを確認し、連合加盟産別を通じて雇用に関するワークルールの確保や離職者の生活への配慮を促していく。
一方、今回の調査で派遣労働者の雇用調整に関する情報が、派遣先や派遣元企業から職業安定所や自治体にも伝わっていないことが明らかになった。このことは、迅速かつ的確な雇用対策を講ずる上で問題である。雇用対策法や派遣指針にも反しており、厚労省は届け出の義務化や再就職援助計画の策定を派遣元・派遣先の連帯責任とすべきである。
 
5.離職期間中の教育訓練は、労働力の保全とスキルアップをはかり、労働力の不足する介護・医療分野をはじめとして次の北海道を担う人材を育成する上で極めて重要である。
1年から2年にわたる長期の職業訓練を可能にし、企業の遊休設備を活用した技能訓練や企業から講師を派遣するなど、ポリテクセンターや道立高等技術専門学院とも連携して、景気回復後に優先して再就職できるような体制構築が必要である。
 
6.財政の厳しいなか、自治体独自の雇用対策が国に先駆け行われていることは評価できる。一方、2次補正と新年度予算で措置される「ふるさと雇用再生特別基金事業」「緊急雇用創出事業」については、教育訓練の拡充をはじめ福祉分野や森林整備などでの雇用創出につながるよう、雇用期間、対象事業、事業従事者に占める新規雇用者の割合等に関する要件の弾力化など、地方自治体にとって柔軟で使いやすい制度とすべきである。また、全国で4,000億円の基金規模では不十分であり、大幅に増額すべきである。
 
7.企業における雇用確保のため、ワークシェアリングの導入が必要とする論議が出ている。しかし、これまで正規から非正規への置き換えなどで人件費を抑制し、労働分配率を下げて蓄えてきた記録的な内部留保に手をつけず、労働者へのパイをそのままにしたワークシェアリングでは、雇用こそ維持できても国内の消費購買力を引き上げ、内需主導型経済への転換にはつながらない。
いま、政府が早急に成すべきことは、長時間・加重労働、不払い残業を抜本的に是正するための法改正や、雇用情勢のさらなる悪化に対応し若年者雇用の拡大につながるよう、年金支給開始年齢の繰り延べ延期も検討すべきである。
 
8.今回の調査では、ハローワークを訪れる利用者にも聞き取りを行った。無作為に声をかけたごく一部の方の話にもかかわらず、その殆どが愛知や長野の会社で派遣として働いていて契約を打ち切られ、昨年暮れから故郷に戻り求職活動をしているのである。多くの道民が「派遣切り」にあっている事実を深刻に受け止めた。北海道は東京事務所や大阪・名古屋支所において道内出身者のための生活・労働相談窓口を開設し、職安行政と連携して「派遣切り」等により生活の糧を失った人たちを支援すべきである。
 
9.連合北海道が1月22日に実施する緊急雇用対策に関する対道要請は、今回の雇用調査の結果に基づく追加事項も含め、迅速かつ実効のあがる雇用対策、将来の北海道にとって必要な雇用創出策の確立を求めていく。
 連合北海道は、引き続き総合雇用対策本部のもとで地域と産別が一体となり、社会連帯の取り組みを強めて、道内勤労者の雇用と生活を守っていく。
 
以 上
 
 
■連合北海道緊急雇用調査団 訪問先





 
1月19日(月) 1月20日(火)
函館商工会議所 ハローワーク苫小牧
ハローワーク函館 苫小牧市
ポリテクセンター函館 苫小牧高等技術専門学院
函館市
 
トヨタ自動車北海道(労使)
苫小牧商工会議所