2005年11月17日

日本労働組合総連合会北海道連合会
会 長 渡部 俊弘

原子力機構・幌延深地層研究センター地下施設建設掘削土に有害物質が検出された件に関する報告と見解

 日本原子力研究開発機構(10月1日、日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構が統合。新独立行政法人)の幌延深地層研究センター(以下、幌延研究センター)の地下施設建設のための掘削調査に伴い排出された土壌から「基準値を超える有害物質」が検出されたとする記事が複数の新聞で報道されていることに関して、連合北海道としてその事実確認を行ったので報告する。

(1) 新聞記事では、「幌延深地層研究センターの地下施設建設前のボーリング調査現場から04年、土壌汚染対策法で定める基準値の13倍にあたるカドミウムなど有害物質が検出されていたことがわかった」「1年半が経過した今も住民への報告をしてない」(毎日新聞11月8日)とする主旨の報道がなされた。このことに関して、幌延研究センター札幌事務所に説明を求め事実確認を行った。

 幌延研究センターの説明をまとめると(2)〜(5)の通りである。

(2) 幌延研究センターは、地下施設の掘削に伴い発生する掘削土置場の設計のため、これまでに実施したボーリングで取得した土壌に含まれる物質の成分分析を行った結果(04年2月と11月)、土壌汚染対策法に定める特定有害物質のうち、5種類(カドミウム、セレン、砒素、フッ素、ホウ素)について同法の「溶出量基準値」と「第2溶出量基準値」の間を示す値を検出した。

(注)土壌汚染対策法による、「溶出量基準」とは有害物質の種類と濃度に応じて管理する方法等に関する技術基準を定めたもの。溶出量基準と第2溶出量基準値の間であれば産業廃棄物等の処分場でいう遮水工型という管理方法となり、第2溶出量基準値を超えるときは遮断工型の管理方法となる。

(3) 坑道掘削により発生する掘削土については、自然的要因であり、元々その土地に存在していた岩石や土壌である。こうした岩石や土壌の取扱について、環境省(平成15年2月、都道府県知事宛)は土壌汚染対策法の適用を受けないとしているが、幌延研究センターは、同法の適用を受けないものの、自主的に環境への影響に配慮して、同法に定められている管理方法と同様の基準を採用して掘削土置場を設計することとしている。なお、今年度の11月から工事に着手しているが、実際に掘削土が出てくるのは平成18年度以降であり、現在、掘削土は排出されていない。

(4) 新聞報道で「1年半が経過した今も住民への報告をしてない」とすることに関しては、幌延研究センターは、幌延町に対し4月27日、道に対し5月21日に「有害物質は自然的要因で、住民への影響はない」旨説明した。また、掘削土の管理については、土壌汚染防止法の適用を受けないが、前述の方針に基づき、遮水工型(雨水防止構造)することについて、5月に道と相談したところ問題がないことを確認したとしている。

(5) 幌延研究センターは、積極的な情報公開を盛り込んだ協定を北海道および幌延町と締結しており、これまでも情報公開に努めてきた。情報公開のタイミングには色々な方法があると考えるが、この問題に関しては、掘削土の調査・分析に基づく環境に配慮した管理方法をがまとまった9月に、「高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する知識基盤の構築−平成17年とりまとめ−」の報告書に記した(ホームページにも分析結果を記載した報告書を掲載)。また、情報開示手続きがあれば所定の手続き後に閲覧できる。情報公開は、今後とも、積極的に取り組んでまいりたいとしている。

(6) 以上、幌延研究センターの説明を報告するとともに、この件に関する連合北海道としての見解を明らかにする。
 @ 今回の有害物質を含む掘削土の管理手法は土壌汚染防止法の適用を受けないが、自主的に同法に基づく基準で管理することについては、適正と判断する。しかし、A 幌延研究センターには、この問題に関する住民への説明を早急に実施すること。今後は、住民への影響の大小に関わらず迅速に情報公開を行うことや地域住民に対する説明や情報公開の在り方について改善を求める。また、B 幌延研究センターから報告を受けた幌延町は迅速な地域住民への報告の責任がある。C 道に対しては、幌延研究センターの各種研究・調査事業に伴う環境への影響などについて、住民生活に不安を与えることのないよう指導・監督を強化するよう求める。

(7) なお、9月に総選挙が実施され定期大会が延期されたことの影響で遅れている「連合北海道幌延監視連絡会」を大会終了後、早急に開催し、関係地域組織に対する説明の場を確保する。
以上
 
以  上