2005年6月8日
日本労働組合総連合会北海道連合会
会  長  渡 部 俊 弘
 
     
北の大地 子ども未来づくり北海道計画についての見解
 
 
 本道の合計特殊出生率は全国平均を大きく下回る1.20(全国平均1.29)で、急速に少子化が進行し、その影響が懸念されている。
 こうしたことから、道は、「北海道子どもの未来づくりのための少子化対策推進条例」(略称「北海道子ども未来づくり条例」)を2004年(平成16年)10月に制定し、この条例を推進するため3月に、「子ども未来づくり北海道計画」(平成17年度〜5年間、以下、実施計画)が策定された。この実施計画は、国の「次世代育成支援対策推進法」に基づく「都道府県行動計画」の第1期計画と「北海道エンゼルプラン」を発展的に引き継ぐものと位置づけられている。
 連合北海道は、「子ども未来づくり条例」を実効あるものとするため、実施計画に対し、仕事と家庭の両立に向けた雇用環境整備、経済的負担の軽減などを重点に17項目の要請書を、高橋知事に提出してきた。
 
 今回策定された、実施計画の特徴は次の通りである。
第1に、少子化の要因として未婚化、晩婚化とともに本道における「家庭と仕事を両立できる雇用環境の整備が遅れている」と指摘し、少子化は北海道の将来の労働生産性の伸び悩み、経済成長率の低下や年金・医療・福祉など社会保障制度など生活にも影響を及ぼすことが懸念されると分析されている。
第2に、こうし認識から、子育て家庭における経済的な負担軽減のほか、社会全体で少子化対策の推進をはかるため、地域のボランティア「せわずき・せわやき隊」を組織する運動を提起している。これは地域に於いて子育てする力をはぐくむ取組であり、子育て経験者が地域ぐるみで子育てを支援する地域コミュニティとして注目したい。
第3に、連合北海道は、すべての事業に事業指標を設定するように求めてきたが、実施計画では、国の特定14事業(注A)の他、道独自に22事業(せわずき・せわやき隊組織化数、育児休業制度普及率、保育サービスにおける待機児童数など、注B参照)、また、成果指標として10項目が掲げられた。
第4に、連合北海道が実効ある実施計画とするための根幹的な課題としてきた、雇用環境の整備については、若年者の就業支援体制の整備、さらには事業指標として、育児休業制度の普及率を49.3%から2017年には82.6%とすること、週休2日制普及率73.9%から同年まで94.9%とすること。また、労働基準法など労働法制遵守の意識啓発が掲げられるに止まっている。
第5に、子育て家庭への経済的負担軽減については、乳幼児医療給付事業による助成、ひとり親家庭等医療給付事業による助成、不妊治療に要する医療費の負担軽減が盛り込まれたが、連合北海道が求めた、雇用環境の整備に関わる課題も含めて、道独自の重点施策・財源措置等について、道は「新たな財源確保や制度が必要」との認識は示したが、その多くは、国への要望事項とするに止まった。
 
 わが国では、労働の規制緩和や経済のグローバル化による競争激化が人件費の圧縮や雇用の劣化(パート・派遣など)をもたらし、取りわけ次代を担う若年者が将来への夢が持てないことも少子化の大きな要因となっている。さらに、子育て家庭への経済的負担軽減では児童手当の拡充が大きな課題である。フランスでは、児童手当は手厚く、また、所得制限はない。鉄道運賃割引制度もある。こうして、出生率は94年の1.65を底に02年度には1.88まで改善した。出生率の低下は先進国共通の悩みであるが、EU諸国では出生率が改善に向かっている。(注@参照)これらは、今後の重要な政策課題と位置づけ取り組みを推進する。
 道の実施計画には、推進体制として「子どもの未来づくり審議会」に中高生の委員で構成する「子ども部会」を設置するというユニークな取り組みも見られるが、全体としては、教育・医療・保健・福祉など道庁の各部施策の寄せ集めとの印象を免れない。
 連合北海道は、05年度道予算編成にあたって、実効ある次世代育成施策と予算確保を求めて、地域のニーズに応じた子育て支援事業を実施する前向きな市町村への助成措置を求めたが、そうなっていない。前述の通り課題は山積しているが、実施計画では毎年度、事業を見直すとしており、連合北海道としては、着実な計画の実施とその拡充を求めて、今後も取り組むと共に地域ぐるみの子育て支援の運動などにも積極的に対応したい。職場では、育児休業制度の普及、男女平等参画社会の実現など仕事と家庭の両立を図る取り組みを強化する。
以上
注@ ヨーロッパ諸国の児童手当
注A 国の特定事業
 地域子育て支援センター  休日保育          子育て短期支援事業
 つどいの広場       乳幼児健康支援(派遣型)  放課後児童クラブ・トワイライト
 通常保育         乳幼児健康支援(施設型)  放課後児童クラブ・ショート
 延長保育         一時保育          ファミリー・サポートセンター
 夜間保育         特定保育
 
注B 道独自の目標項目
(参考)以上の見解に関わる関係資料は次の通りです。

■「北の大地 子ども未来づくり北海道計画」北海道のホームページ、保健福祉部。
■「子ども未来づくり少子化対策推進条例素案に対する、連合北海道の要請」及びこれに対する「道の回答」は、連合北海道政策調査情報第33号。連合北海道ホームページの政策制度の取り組みに掲載。
                  
以上