寿都町及び神恵内村における「文献調査応募」に対する事務局長談話
2020年10月14日
寿都町ならびに神恵内村における高レベル放射性廃棄物最終処分場選定に向けた
文献調査応募に対する事務局長談話
日本労働組合総連合会北海道連合会
事務局長 藤盛 敏弘
◆国とNUMO、2町村に課せられた責務
高レベル放射性廃棄物の最終処分場選定に向けた文献調査に関して10月9日、寿都町は原子力発電環境整備機構(NUMO)に応募書を提出し、神恵内村は国からの調査申し込みの受諾を表明した。
2町村の文献調査応募に向けた動きが明るみに出て以降、地域住民や近隣自治体、漁協や森林組合など一次産業団体等から不安や反対の声があがり、鈴木知事はこの間、「特定放射性廃棄物の持込みは受け入れ難い」とする道条例の制定趣旨を踏まえ慎重な対応を要請してきた。道議会においては、地域に修復困難な亀裂をもたらすことが懸念されるとし、高レベル放射性廃棄物の処分の在り方について、透明性の高い冷静な議論を求める決議を採択している。
このような中で、文献調査への応募が決められた意味は、今後、2町村のみならず、国や実施主体であるNUMOが、透明性の高い公正な議論と客観的かつ科学的な検討を通じて、道民や近隣自治体の懸念や疑問に応える責務を負うということである。
◆不信感を謙虚に受け止め民意を反映すべき
日本原子力文化財団が実施した2017年度の世論調査によると、高レベル放射性廃棄物について「私たちの世代で処分しなければならない」が53%であるのに対し、「近くに最終処分場が計画されたら反対する」は54%である。高レベル放射性廃棄物処分の必要性を認める一方、事故への不安を感じ、近隣への処分場立地には否定的な意見が過半を占めている。同じ調査で、原子力の専門家や事業者、国、自治体を信頼できるか尋ねたところ、国や事業者を信頼できるとする層は1割に満たない。特に、国を信頼できないとする層が45%を超える結果である。
このように、高レベル放射性廃棄物の処分に関する相反した心理は、国への高い不信感を背景に、議論を一層難しくしている。国は、処分地立地に否定的な声に真摯に向き合い、肌感覚ではなく合理的に民意をすくい取る作業を積み上げ、社会的合意の基盤醸成に努めるべきである。
◆求められる「公正な手続き」~連合の新たなエネルギー政策~
東日本大震災における原子力発電所事故を契機として、2012年9月に策定された「連合の新たなエネルギー政策」は、エネルギー政策に対する国民の理解と納得、国民合意を得るには、「情報公開・情報提供」の適切な実施、「公正な手続き」の法制化が求められるとしている。何より、提供される情報を国民が正確・透明・公正と判断するためには、国民の国に対する信頼が必要であるとした。この考え方は、高レベル放射性廃棄物の処分政策にもあてはまる原則であり、最終処分地を巡る課題は、信頼の礎となる公正なルールのもと、北海道のみならず広く全国で議論すべき国民的課題である。
そのため、最終処分場選定プロセスにおいては、公平・公正を確保し、地域住民の意思を確実に保証する合意形成ルールを作るため、国は最終処分法など法制度を改めるとともに、調査結果を公正で中立的に評価する第三者組織を設置する必要がある。
◆連合本部と連携して国民議論を求める
連合北海道は今後とも、道条例の尊重・遵守を求める方針を堅持するとともに、条例に込められた道民の意思を明確に示すため、脱原発に向けたエネルギービジョンを展望しながら、国民全体の課題として高レベル放射性廃棄物の処理・処分に関する議論を求めていく。そのため、我々自ら主体的にバックエンド問題に関する理解を深めるとともに、連合本部と連携して公正・公平な合意形成ルールの確立を求め取り組むこととする。
以 上
事務局長談話は、以下を参照