TPP交渉の閣僚会合大筋合意に対する談話
2015年10月9日
環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の閣僚会合大筋合意に対する談話
事務局長 出村 良平
環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加12カ国は、5日、閣僚会合で大筋合意をした。合意内容は、輸出産業は期待できる一方で、食料自給率は先進国中低位の基準にあり、食料安全保障に関わる農業や医療・保険など、国民生活に密接に関係し、その影響は甚大である。農林水産の多くの品目で関税撤廃や引き下げが行われ、特に日本農業はかつてない市場開放に直面する。そもそも何をもって「国益」とするのか、国民に対して十分な説明責任を果たすことなく、国民合意を怠り、TPP参加交渉を前のめりに進めた政府の姿勢は厳しく問われなければならない。
TPPは、市場アクセスのみならず、食の安全、医療・保険、著作権などの知的財産、国内法の変更さえも余儀なくされるISDS条項など、国民生活全般や国の在り方にも関わる。とりわけ、関税撤廃については、北海道は農林水産業など一次産業が基幹であり、それに関連する流通やサービスなどの業種等に多大な影響を及ぼし、雇用や勤務環境・条件など労働問題とも関係する。連合北海道はTPP参加交渉に向けて拙速な判断をすることのないよう指摘し、北海道庁をはじめ北海道TPP問題連絡会議やTPP問題を考える道民会議などと連帯し、情報開示や国民への説明、合意なき参加は行わないよう、オール北海道で対応してきた。
TPPは秘密交渉とし、内容が不透明であることから、批判が高まった米国やオーストラリアでは国会議員に作成中の協定文書の閲覧の機会を与えるなど情報を伝えたが、日本は一切秘匿した。国民の主権問題にも関わらず、国民は蚊帳の外で、TPPに関する情報はもとより、交渉内容は閣僚会合の大筋合意まで知ることができないシステムや政府の対応については民主主義の観点からいっても逸脱している。
協定交渉参加に関して、農林水産分野の重要5品目などの聖域の確保を最優先し、確保できないと判断した場合は脱退も辞さないと衆参両院は決議した。しかし、重要5農産物については、輸入特別枠の設定や関税の大幅引き下げを容認するなど、日本政府は譲歩を重ねた。明らかに国会決議に抵触し、これでは農産物の再生産はおぼつかない。北海道農業の衰退が強く懸念され、その影響は経済面に止まらず、地域疲弊や崩壊さえ招く恐れがあり、北海道庁もTPP協定分野別影響等に関する調査を行う方向性を示している。
安倍政権は、TPPを成長戦略の柱に位置づけ、早期に協定を締結し、「アベノミクス」の推進力にしようとしているが、今後は条約批准に向けて、条約文の確定や協定締結に向けた国会承認が必要となる。連合北海道は、改めてTPP参加のメリットやデメリット、影響の試算、参加の場合は農林水産業所得の向上とその具体的道筋の提示など、国民に情報を開示し説明責任を果たすとともに、国民合意のもと参加の是非を判断するよう、オール北海道で政府に求めていくこととする。